2016年3月15日 | 森山史海
「中傷サイト被害最前線」 第17回 ネット中傷被害対策としての教育
いろいろなネット中傷の被害者、加害者の相談に乗るほどに感じてきたことがあります。それは改めて申し上げるまでもないかもしれませんが、この問題が、本当に根が深く、実に深刻な社会問題だということです。その理由のひとつに、そもそも加害者が自らの誹謗中傷が悪いことだと認識できていないこと、さらにいえば誹謗中傷どころか正義だと思ってやっている場合が多いという現実があります。
さまざまなケースを見てきて、加害者と思われる人は本当に加害者なのか、そして被害者は本当に被害者なのか、という気持ちに陥ることがあります。ことの発端は、加害者側の被害者意識であったり、さらに攻撃された被害者は自分を守るために反撃したり。自分が捕まってまでも相手を攻撃したいという衝動に駆られる人も少なくありません。どこに相談しても解決しないという意識から、自暴自棄になってしまう人もいます。気が付くと加害者どころか、被害者までが加害者になってしまうケースも多いのです。
これを判断するのは、非常に難しく、当然責任も伴います。自らの加害者としての自覚もなく、むしろ被害者意識があり、かつ、第三者的にみても、判断は簡単ではないというのが、ある意味、この問題の一つの特徴といえるかもしれません。
たかだかインターネットの誹謗中傷と思っている人は、依然として世の中には沢山います。しかし、自ら全く意識しないうちに、犯罪的行為に手を染めてしまう、という恐ろしさが、ネット中傷にはあるというべきです。もちろん、本人が確信的にかかわってしまう場合もありますが、本人が犯罪に巻き込まれていることに気付いていない場合という問題が、これほど社会問題化しているこのネット中傷被害について、まだ認知されていないということも感じます。
その意味で、やはり教育が大きな意味を持つということを思わずにはいられません。知れば知るほど、インターネットを使う場合は、まさに自己防衛のためにも、きちんとした教育を受けていなければいけないということを痛感しました。
被害者は、加害者をなかなか許す気なれません。加害者に重い処罰を求めます。確かに、誹謗中傷され続け、精神的にも肉体的にもボロボロになってしまった被害者をたくさん見てきたので、その気持ちは痛いほど分かります。もちろん犯罪は犯罪です、きちんとその罪に向き合うべきだと私も思います。
その一方で、私が思うことのひとつですが、誰かインターネットの正しい使い方や、犯罪になるということを教えてきたのかということです。きちんとした教育を、多く人は受けないまま、このツールの利便性ばかり注目して使ってきたのではないでしょうか。
急激なインターネットの普及に、何の教育もされないまま、罪を犯したのだから償えということに、奇妙な違和感を持つのも事実です。どうしたら、この問題をしっかりと考えきちんとした教育を行えることができるのでしょう。私たちのような、民間の小さな活動だけでは限界を感じてしまう毎日です。
中傷サイト被害最前線
第1回 サイバーオーディター (コラムが残っていないため表示できません)
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