司法ウォッチ 森山史海 コラム8

2015年2月16日 | 森山史海

「中傷サイト被害最前線」 第8回 「真実」という見えない壁

 今、たくさんの知り合いが、私たち「サイバーオーディター」のことを広めてくれています。それと同時に、その活動に期待を寄せてくれる人も少しずつ増えてきました。そんななか、ある人から一人の男性を紹介され、会うことになりました。

 その方に会って話を聞くと、知人の女性がFC2の掲示板に、個人情報を書かれ、困っていると言うことでした。戻って確認すると、確かにそのサイトに、彼女の名前、住所、電話番号まで書かれていました。投稿の内容は、この女性が「詐欺師の片棒を担いでいる」というものでした。

 私たちの活動で、まず、以前から議論になるのは、真実はどこにあるのか、ということでした。つまり、この場合ならば、この女性が「本当に詐欺の片棒を担いでいた」のか、という点です。もちろん、女性や依頼者に聞いたところで、「そんなことはしていない」という回答が返ってくるのは明らかです。逆に、この投稿通りのことをしていたのかも、私たちは確認できない。

 その結果として、こういう見方にさらされることになります。

 「詐欺に遭って困っている人たちのことを考えたらばどうなのか」
 「詐欺をした方が悪いのだから、書かれて当然なんじゃない?」
 「被害者を救済する方が先でしょう」
 「(問題の対象者は)逃げ回っているんだから、個人情報を含めて情報が欲しい人がいるのは当たり前」
 「被害者はどうなるの?責任を取ってくれるの」などなど。

 もちろん、彼女が「詐欺の片棒」など担いでいないことも、それが追及している側のなんらかの誤解に基づくものであること、あるいは彼女自身が騙されて、「片棒を担がされた」被害者であることも考えられます。

 真実を知ることは困難であり、私たちには安易に判断もできない。追及者側が現実的になんらかの被害者である場合、私たちも本当に心を痛めます。しかし、彼女もまた、書き込みによって、個人情報を書き込まれ困り悩んでいる。「詐欺をした」「片棒を担いだ」などと書かれて仕事にも影響が出ているという話でした。

 いろいろな人の意見を聞けば聞くほど、「真実」の判断は難しい。私たちの活動が結果として、被害を生んでいる「悪」を助けているという批判の対象になるかもしれない。しかし、判断できない現実を前に立ち止まっていたならば、延々と救済への道は開かれず、この状態が続く――。

 こうしたケースを通して、私たちは、この活動を続けていくうえでの一つの考え方に到達しています。次回、そのことを詳しく書こうと思います。

中傷サイト被害最前線

第1回  サイバーオーディター (コラムが残っていないため表示できません)

第2回  最初の『彼女

第3回 巨大掲示板の恐怖

第4回  頼るところ

第5回  誰も手を差し伸べない現実

第6回  『書くことを止める』と言う発想

第7回  加害者に伝える『効果

第8回  『真実』という見えない壁

第9回  被害者と向き合うという原点

第10回  ネット『告発』との区別

第11回  拡散にご協力を!

第12回  『共犯者』という自覚

第13回  誤ったネット情報による『安心感』の罠

第14回  根本的な解決へ私達が今やるべきこと 

第15回  自らの行為に向き合ってもらうために

第16回  ねじ曲がって伝えられる被害訴えの真実

第17回  ネット被害対策としての教育

 

関連記事

PAGE TOP