司法ウォッチ 森山史海 コラム6

2014年12月13日 | 森山史海

「中傷サイト被害最前線」 第6回 「書くことを止める」という発想

 ネット掲示板での中傷被害に、こんなにも悩んでいる人たちを早急に何とかするにはどうすればいいんだろう。書かれてしまった以上、削除されなければ解決にならない。でも実際どんなに削除依頼を出しても、中々直ぐには削除されない――。一方、管理人としては、誹謗中傷などを形ばかり禁じ、あとは自己責任に丸投げしているようにも見えます。どうにもならないような、現実がそこに横たわっていました。

 私がこの活動を始めてから、「削除させる」ことを銘打っている業者のサイトにいくつも目を通してきました。ほとんどのサイトは、料金が明確には書かれていませんでした。電話番号が記載されているところを、目にしたら掛け、メールアドレスしか表示していないところはメールでコンタクトを試みました。

 「本当に削除してもらえますか?」。この質問に対する答えの多くは、次のようなものでした。

 「やってみなければ、分かりません」
 「削除を保証するものではありません」
 「法人が対象で個人は受け付けておりません」

 料金も明確にされなかったり、安くても数万円で、多くは数十万円。とても簡単に頼める金額ではありませんでした。やっぱり、お金がないと何もできないのか。正直なところ、きちんと対応してくれるところがあれば、そこにリンクして、被害者をどんどん紹介するだけでも、と思ったこともありました。

 でも、それは甘かった。正直、安心して任せられるところは1件もありませんでした。もちろん、私が探せていなかっただけかもしれません。しかし、いつも思うことは同じでした。なぜ、こんな明らかな不正義が簡単に解決出来ないんだろう?

 何年も悩んだあげく、一つシンプルな発想にたどり着きました。書かれたことに対処しようとするのでは、本当は遅いのかもしれない。書くことをやめさせない、と。そのために、被害者が出来ること、弁護士が出来ること、警察が出来ること、家族、友人が出来ること、会社が出来ることがきっとある。これらすべての人が協力、連携すれば、今よりも問題を解決はできるんじゃないか――。

 世の中全体で、悪質な書き込みを許さないと言う姿勢を見せていく。もう放置も泣き寝入りもしない。そして、そう言う書き込みを直接指定して、一つ一つ注意を促す。遠回りのようでも、粘り強くその活動を続けていくことが、本当の解決につながるのではないか。

 この発想によって、民間の力で、ネット中傷を監視、記録、受理番号の発行をして、サイト上で公開、管理者には削除への責任、加害者と加害者予備軍には、抑制への自覚を求める、私たちのスタイルにたどり着いたのでした。

中傷サイト被害最前線

第1回  サイバーオーディター (コラムが残っていないため表示できません)

第2回  最初の『彼女

第3回 巨大掲示板の恐怖

第4回  頼るところ

第5回  誰も手を差し伸べない現実

第6回  『書くことを止める』と言う発想

第7回  加害者に伝える『効果』

第8回  『真実』という見えない壁

第9回  被害者と向き合うという原点

第10回  ネット『告発』との区別

第11回  拡散にご協力を!

第12回  『共犯者』という自覚

第13回  誤ったネット情報による『安心感』の罠

第14回  根本的な解決へ私達が今やるべきこと 

第15回  自らの行為に向き合ってもらうために

第16回  ねじ曲がって伝えられる被害訴えの真実

第17回  ネット被害対策としての教育

 

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