司法ウォッチ 森山史海 コラム5

2014年11月1日 | 森山史海

「中傷サイト被害最前線」 第5回 誰も手を差し伸べない現実

 私は、インターネット上の掲示板への、心ない書き込みで悩んでいる人がどんどん増えてきていることを実感してきました。被害者本人のみならず、家族、友人、職場の関係者が、がそれぞれの立場で解決策を模索していることを知り、なぜ、こんな不当な人権侵害が無くならず、また続いているのかが不思議になってきました。

 弁護士を紹介してほしいと、言われるままに紹介したけど、現実的には時間もお金も掛かる。お金がないと解決しない? 確かに弁護士に頼む以上お金が掛かるのは当たり前のことだけど。でも、なぜ、被害者がそれを負担しなければならないの?――。これは、本当に法律など何も知らなかった私の、素朴な疑問でした。

 しかし、一方で、この思いは、被害者の方々が共通して持っている気持ちのはずではないか。ただただ単純に、書き込みした人を特定し、反省させ止めさせる。たったそれだけのことがなぜ出来ないのか。弁護士がダメなら警察に相談しよう、きっとすぐ解決するだろう。こんなにも多くの被害者がいて、なにもしないなんてあり得ないから・・・。

 そんな気持ちから、私は警察に相談に行きました。今でこそ、ネットの書き込みやストーカーに対して、当局の認識は高くなっていますが、私が相談に行った、8年くらい前の警察の対応は、こうした案件に極めては冷たいものでした。最初からきちんと読んでいけば、間違いなく個人を特定できるような書き込みではあっても、「明確に個人情報が書いていない」という扱い。返ってきた言葉は、「誰のことを書いているか分からないし、気にしないことですね。気にし過ぎではないですか」という言葉でした。

 行き場を失った被害者は、結局は泣き寝入りするしかないのか。こんなことがまかり通る世界なのか。怒りがふつふつと込み上げ、悔しい気持ちでいっぱいになりました。ネット上に展開する明らかな人権侵害が、それを取り巻く無関心と軽視によって、誰も責任を負うことも、手を差し伸べることもなく、放置されている、ということを痛感しました。

 なんとか私たちの力で訴え、管理者に適切な対応を促し、少しでもこうした被害を減らすことはできないだろうか。どこかに糸口があるはず――。そうした気持ちから手探りで、この活動を始めて8年。ようやく現在のサイバー・オーディターの活動に、沢山の方々の協力で辿りつきました。ここまでくるのに、こんなにも時間が掛かるなんて思いもしませんでした。まだまだ私たちの活動は、緒についたばかりです。課題も山積していますが、今も「なんとかしなければ」という気持ちを原動力に活動拡大に取り組んでいます。

中傷サイト被害最前線

第1回  サイバーオーディター (コラムが残っていないため表示できません)

第2回  最初の『彼女

第3回 巨大掲示板の恐怖

第4回  頼るところ

第5回  誰も手を差し伸べない現実

第6回  『書くことを止める』と言う発想

第7回  加害者に伝える『効果』

第8回  『真実』という見えない壁

第9回  被害者と向き合うという原点

第10回  ネット『告発』との区別

第11回  拡散にご協力を

第12回  『共犯者』という自覚

第13回  誤ったネット情報による『安心感』の罠

第14回  根本的な解決へ私達が今やるべきこと 

第15回  自らの行為に向き合ってもらうために

第16回  ねじ曲がって伝えられる被害訴えの真実

第17回  ネット被害対策としての教育

 

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