2015年4月16日 | 森山史海
「中傷サイト被害最前線」 第9回 被害者と向き合うという原点
ネット上の掲示板に書き込まれた、個人に関する情報の内容が、どこまで真実なのか――。そこについて、私たちサイバーオーディターとして確認するのは、もちろん簡単なことではありません。
例えば、前回ご紹介したような、詐欺にあった被害者が書き込んだともとれるような内容の場合。仮に、それが真実であったとしたなら、被害者からすれば、「情報がほしい」「同じような被害者は出したくない」「許される行為じゃないし、責任は取るべき」「そっちがその気なら、こっちはネットで仕返ししてやる」などといった、思いが反映していることだって想像できます。
確かに自分がそうした被害者の立場になったときのことを考えれば、その気持ちは理解できるし、そうした感情になること自体は、仕方ない、ということもいえるかもしれません。ただ、逆に万が一、事実と違った場合どうなのか。書かれた本人が、どれほど傷つき悩み苦労するかも想像できます。一方的に書かれ、不特定多数の人に見られ、対処もできない。日常生活や仕事にまで影響が出る人も多いし、どちらの意見も正しく、真実を見極めるのは難しい。
この数年間、サイバーオーディターの中でも様々な意見が出されてきました。どちらの立場に立ってみても言いたいことは分かります。あちらを立てれば、こちらが立たず。しかし、残念なことに1件1件サイバーオーディターが、真実を検証する時間もありません。もちろん、事実に反していた場合、その間、被害者は苦しみ続けることになってしまいます。
この点では、内部から限界論や消極論も出され、意見の食い違いから、私たちの活動から離れていく人もいました。正直、活動に行き詰まりを感じた時期もありました。しかし、それでも容赦なく書き込みによる被害で苦しんでいる人は凄い勢いで増えていく。一方で応援してくれる人も増えてきて、紹介で相談に来る人も増えていく。
そして、時間をかけて、私たちが到達したのは、できるだけのことをやる、現実の救済でした。真実かどうかよりも、ひとまずどんな理由であれ、ネット上での誹謗中傷という行為自体を問題視し、それに苦しむ人たちと向き合おう。個人情報の流失で、大勢の人が悩み苦しんでいること、それが原因で憂欝や自殺、傷害事件、殺人事件にまで発展している現実に、私たちなりに取り組むという活動の原点を確認しました。
少しでも被害を食い止めることができるよう、サイバーオーディターは多くの方の支援を呼びかけながら、活動を続けていこうと思います。ぜひ皆様の協力をお願いします。
中傷サイト被害最前線
第1回 サイバーオーディター (コラムが残っていないため表示できません)
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